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野球場写真館 番外編

Ver.1.5
03/30/2001



 新潟県の北隣、山形県鶴岡市には「日本唯一」という、ある特徴をもった
野球場がある。その名を「鶴岡ドリームスタジアム」という。
 この球場は、現存するものでは国内でたったひとつの、内外野総天然芝の
グラウンドを持つ球場なのだ。
 現在日本国内の多くの野球場は、内野クレー舗装・外野天然芝、或いは、
内外野総人工芝が一般的で、内野のダイヤモンドの内側にも芝を張ったグラ
ウンドというのは、衛星放送のメジャーリーグ中継だけでしか見れない世界
だった。それが今、山形県は庄内平野の一角に姿を現した。

 この「夢の球場」は、日本の野球場の新たなフラッグシップになり得るの
か。そして、私達はこの球場から何を学ぶべきなのか。

 そして何より、私達が目指すべきスタジアムの姿が、きっとある。
※ 今回の鶴岡ドリームスタジアムの画像は、
  99年6月5日(土)の柿落としと、7月4日(日)の全日本−JR東日本東北の
  ものを中心に掲載しています。


●鶴岡ドリームスタジアム
 99年6月5日(土)にオープンしたばかりの野球場。
それまで、市中心部・鶴岡公園にあった鶴岡市野球場が老朽化したため、
市街地南部の小真木原公園地内で整備されたもので、正式名称は「鶴岡市
小真木原野球場」。尚、愛称は一般公募によるものである。
 両翼97.6m、中堅122m。観客席は内野のメインスタンドと全面芝張りの
外野スタンドの2ヶ所で、収容人員12,000人(内野:5,500、外野:6,500)。
照明設備は照明塔6基で、内野900Lx、外野600Lx。
●内外野総天然芝のグラウンドとは?
 説明するより、まず写真を見て頂いた方が早い。
というわけで、ご覧下さい。
 このように、外野だけでなく、内野のダイヤモンドの内側にも芝を敷い
てある。また、内野のファウルエリア、バックネット前もすべて芝張り。
純然たる「総天然芝」である。ご覧の通り、蒼々とした鮮やかな芝がグラ
ウンドを美しく浮き立たせている。この美観もさることながら、利点とし
て最も大きいのは、内野部の砂煙の発生が軽減されること。イレギュラー
等による、競技中の事故も減少が期待できるし、保水性も水捌けもよい。

 現在プロ野球の本拠地球場のうち、甲子園、GS神戸、広島市民の3つは
内野がクレー・外野が芝。しかしこれ以外の8球場はすべて人工芝である。
ドームや横浜、千葉マリンなどは多目的スタジアムであり、また神宮は使
用頻度が極端に高いなど、球場の用途や使用頻度が限定されているアメリ
カとは違い、日本のプロ本拠地は天然芝を敷くには決して良好な環境にお
かれているわけではなく、止むを得ないのかもしれない。
 ただそんな中、オリックスの本拠地、グリーンスタジアム神戸が00年よ
り内野にも芝を敷くことが内定している。「メジャー行きを希望する、イ
チローの引き留め対策か」と報じたメディアもあったが、例えそれがそう
だとしても、メリットは決してそれだけではないということを、来年きっ
と実感することになるだろう。

 グラウンドについては、また後ほど触れる。
●その他の設備も充実。
 総天然芝のグラウンドもさる事ながら、この球場は規模こそ小さいもの
の、設備面でも高く評価できるものを備えている。
 足の不自由な方にとって、
安心して野球場に行くことが
できるというのは、本当にあ
りがたい話だろう。
 この球場のメインスタンド
にはエレベーターがあり、車
椅子のままスタンドで観戦す
ることができる。
 スタンドにエレベーターで
上がったすぐ横が、車椅子用
観覧席。この他、記録員室な
どがある本部席部分にも、身
障者用観覧室が設けられてい
る。
 更に、外野芝生席の左右中
間部出入口付近にも、車椅子
用観覧席がある。入退場はポ
ール側の出入口を利用するこ
とになるが、車椅子を通すに
は通路が少し狭いように感じ
る。しかしながら、障害者も
健常者と同じように野球を楽
しめる環境が整っているとい
うことは重要である。
 スコアボードは電光式。3色LEDを使用し、昼間でも発色が鮮やかな表示
で、観客にゲームの行方を知らせる。尚、オーダー表示はパネル式。アク
リル板の内側から、パネルを入れるような形である。高校野球や一般利用
が多い地方球場では、全面電光式よりもこの方がランニングコストが削減
できるだろう。勿論、将来的には全面LEDに張り替えることも考えての寸
法になっている。カウントランプ・ジャッジランプもLED。視認性は、通
常よく使われる信号灯よりもかなり良好だ。
 補助カウントランプもLEDが
採用されている。メインスタン
ドのエレベータータワー部分に
設置されている。
 切欠き式のブルペン。マウン
ドはご覧の通り1つだけだが、
一・三塁側にはブルペン2つず
つを備えた人工芝張りの室内練
習場が設けられており、公式試
合などではそこを利用し、この
屋外ブルペンはカメラブースと
して機能させることができる。
 また室内練習場はゲートボー
ルコート各2面を取れるように
設計されている。市民が幅広く
施設を利用できるような、柔軟
な設計が窺い知れる。
 ファウルエリアも広めに取ら
れており、思い切ったプレーを
引き出すことができる。
 フェンス沿いのウォーニング
ゾーンと、ダッグアウトから本
塁に掛けてのウェイティングゾ
ーンだけがクレー舗装になって
いるのを除けば、ファウルエリ
アもすべて天然芝である。
●日本で初めて、じゃありません。
 一部では「鶴岡ドリームスタジアムは、日本初の全面天然芝の野球場で
ある」と報じているメディアもあるが、実は大間違いである。
 国内で最も古い記録では、明治18年頃、東京・溜池にあった工部大学の
グラウンドが内野にも芝を敷いていたというものがある。
その他、1937年に完成した西宮球場(現阪急西宮スタジアム)は、開場当時
は内外野とも天然芝だったという。神宮球場が戦後、米軍に接収されて、
「ステイトサイド・パーク」と名乗った際、内野にも芝を敷いたことがあ
るが、使用頻度が激しく、間もなく廃止された。1962年に完成した、大毎
オリオンズ(当時)の本拠地球場・東京スタジアムは、米・サンフランシス
コのキャンドルスティック・パーク(現スリーコム・パーク)を模して造ら
れた、全面天然芝のグラウンドだった。また、昭和40年代の後楽園球場も
内野にも芝を敷いていた(1975年まで)。後楽園球場はこの前にも、1950年
3月に改修した際に内野に芝を敷いたが、芽吹いて根付く前に激しく使用し
たため、芝が枯れてしまったということがあったという。
よって、内野にも芝を施した球場というのは、日本初のケースではない。
 ただ、都道府県・市区町村などが運営する、いわゆる公営の球場では、
恐らく私が知っている限りでは前例はないはずだ。
 尚、先にも挙げた通り、00年よりグリーンスタジアム神戸では、内野に
も天然芝を敷く予定だ。公営としてはこれが2例目(多分)となる。GS神戸
は、日本のプロ野球本拠地では珍しく、用途のほとんどが野球であり、ア
マチュアも使用するがほんの短期間であり、使用頻度はそうも高くない。
それらが総天然芝化を実施するファクターになったものと思われる。
さあ、プロ本拠地の総天然芝はどんな仕上がりになるのか。この日本で、
どこまで維持・管理できるか。そして、どれだけの評価を得られるのか。
野球場のグラウンドの可能性を広げるためのテストケースとしても、ぜひ
注目して欲しい。
●内野に芝を敷いたのは、野球人の熱意だった。
 実は、この鶴岡市小間木原野球場(敢えてここでは正式名称)、元々は
ごく一般的な、内野:クレー舗装、外野:天然芝、という設計で計画が進
み、総工費20億円で97年7月に着工した。しかし、ここで市民から画期的
な試みを促す声が上がった。
 鶴岡市と、その周辺のアマチュア野球を幅広く統括する、鶴岡野球連盟
が提案を出したのだ。「ぜひ、内野にも芝を敷いてほしい」と。しかし、
当初は市側は「今まで前例がないから(実は先にも書いたように前例はあ
るのだが)、実現は難しい」として、難色を示した。
 だが、この熱意は実り、市は設計変更について検討を進めた結果、遂に
98年4月2日、富塚陽一鶴岡市長が記者会見で、小間木原野球場を内外野総
天然芝張りに設計を変更すると発表した。当初、グラウンドの芝生面積は
9,355平mだったが、これを更に610平m増やして9,965平mに、また排水・
散水の設備も変更が必要となった。しかし、総工費は当初の見込み通り、
約20億円で見積もられた。
●内野を芝にしたら、即メリットが。
 鶴岡野球連盟はこれを機に、鶴岡市で技術指導に長らく携わってきた、
アジア野球連盟事務局長・前田祐吉氏を通じ、全日本チームの合宿を誘致
する活動を開始した。これは、99年に行われるシドニー五輪アジア予選の
会場が韓国・ソウルの蚕室球場になることが背景にあった。実は蚕室球場
は、内外野総天然芝。この条件を満たせる練習環境が整うのは、鶴岡しか
ない。果たして99年7月、全日本候補選手の合宿はここ、鶴岡で行われた。
この強化合宿には日本野球連盟副会長・山本英一郎氏が訪れ、プロ側から
も広岡達朗氏、長崎慶一氏、野村収氏らも指導者として参加し、選手もア
マ球界のエースである杉浦正則(日本生命)、日米大学野球でHRを放った
強打の捕手・阿部慎之介(中央大)らが、JR東日本東北との強化試合で、
その技の片鱗を見せてくれた。
 鶴岡は今後も、日本アマ野球の育成拠点として機能していくはずだ。
また、来年以降はプロ野球・イースタンリーグ公式戦の開催も予想されて
いる。勿論、市営なので使用料はお手頃で、1時間2,200円からと、一般利
用も十分に手が届く価格だ。ぜひ、このグラウンドの美しさと、プレーす
る楽しさ、そして観る喜びを多くの人に味わってもらいたい。

 利用料金や交通案内に関しては、最後に記すのでご参考までに。
●鶴岡は、野球が大好きな街。
 山形は、全国的には「野球が弱い県」という、ありがたくないイメージ
を頂戴している。高校野球の県別勝率は47都道府県中最下位だし、県出身
のプロ選手も少ないし、現に現在は一人もいない。が、県下でもここ鶴岡
は意外にも、古くから野球の盛んな土地である。明治33年10月に、庄内地
方で初めて野球の試合が行われてからというもの、昭和3年、中学野球の
強化を目指し「平田杯高校野球大会」を創設し、昭和10年には北海道遠征
帰りの東京巨人軍を誘致して紅白戦を開催、そして戦後には、高校生や野
球関係者が自ら携わって、木造スタンドながらも、野球場までをも造って
しまった(これが99年5月いっぱいで閉鎖、取り壊しになった鶴岡市野球
場の原型だった)。こんなバイタリティあふれる鶴岡の野球活動は、遂に
新球場を全面天然芝張りにしてしまい、全日本チームの合宿地にまで仕立
て上げてしまったという、現在にまで脈々と息衝いている。
 それはきっと、鶴岡の人は野球が大好きだから、ということが根幹にあ
るからだと、私は思う。行政側も、内野に芝を張るというアイディアを、
最初こそ難色を示したものの、最終的にはこうして見事に実現した。行政
に携わる人が、本当に野球が好きでなければ、ここまではできない。
普通だったら、恐らく行政サイドは「日本のどこにもないものは、ウチだ
って造れっこない」の一点張りで、貴重な意見は呆気なく突っぱねられ、
儚い夢は木っ端微塵と散ってしまったことだろう。そういうお役所的、官
僚的、政治家的(…比喩はいろいろあるが)な自治体とは、鶴岡市は一線
を画していると思う。少なくとも野球に関しては、だが。
●総天然芝・開閉屋根の野球場、ぜひ日本にも。
 この総天然芝に関連して、ちょっと意見を。

 先に、日本プロ野球の本拠地球場は人工芝のグラウンドが多く、また多
目的スタジアムが多いということも記した。無論、この背景は球場の利用
実勢や周辺環境などからいってやむを得ないことであることは、私も十分
承知しているつもりである。
 しかし、海の向こう・アメリカでは、人工芝張りのグラウンドはむしろ
減少傾向にある。人工芝は該して滑りやすいと言われ、またすぐ下はコン
クリート張りになっているため、足腰への負担が懸念されているからだ。
それに保湿性も低く、夏場は照り返しなどによる「芝焼け」が激しく、グ
ラウンドはかなり高温になってしまう。スライディング時の摩擦熱も、難
点である。
また、ドーム球場に関しても、かつての完全閉鎖式のものは実は多くが老
朽化し、設備更新の時期に差し掛かっている。というわけで、現在のアメ
リカで新たに建設される球場の潮流としては「天然芝、開閉式屋根付き」
というのが主流になっており、キングドームに替わり、99年7月に完成し
たシアトル・マリナーズ等の本拠地、セーフコ・フィールドはまさにこれ
である。屋根は開口部も広く、太陽光も十分にグラウンドを照らす。最先
端の設備を備えた、究極の屋根付き球場である。
 どうだろう、この辺で日本もこの潮流に乗ってみてはどうか。別にアメ
リカにかぶれなさい、という訳ではない。現在、日本ではドーム球場は
5大都市圏で整備され、既に過剰供給状態だし、元々多湿で夏は蒸し暑い
日本では、人工芝はあまり適さないようにも感じる。そろそろ、グラウン
ドについて抜本的に検討すべき時期が訪れているのではないか。
どうです?思い切って天然芝、敷きませんか?
●夢よ、続け。そして、輝け。
 鶴岡ドリームスタジアムは、現存する唯一の総天然芝の野球場として、
全国的なメディアでの取り扱いこそ小さかったが、多くの野球人の注目を
集めた。「空の下で、思いっきりボールを追いたい」という、野球人の夢
をきっと叶えてくれるグラウンド。身体が不自由な人にも、野球を観る喜
びを与えてくれる、優しい構造のスタンド。きっと、世代を越えて野球の
楽しさに触れることができるはずだ。
 このスタジアムが日本の野球場のフラッグシップとして、そして日本の
目指すべき野球場の姿として、末永くあり続けることを願ってやまない。


 鶴岡野球連盟の帽子の横部分には「Dream」の文字が踊っている。
「夢は叶えるためにある」と、誇らしげに、そして溢れ漲る強い自信を、
映し出すかのように。





●ごあんない
<<< 交通のご案内 >>>
(電車・バスをご利用の場合)
 JR鶴岡駅、または庄交モール(鶴岡駅から徒歩5分)から、
 庄内交通バス
 ・「机」行で「小真木原運動公園前」下車徒歩5分
   (一日4〜5往復、全便休日運休)
 ・「新山鉱泉」行で「美原町」下車徒歩10分
   (一日4〜5往復)
 ・「湯田川温泉・坂の下・木の俣」行で「稲生町」下車徒歩10分
   (30〜60分毎)
 など。詳細は、鶴岡駅の観光案内所、庄交モール案内所で。


(車をご利用の場合)
 新潟方面からは、R7で鶴岡市街地に入るところに鶴岡バイパスと旧道
が分かれる交差点があります。それを右折して旧道に入り、鶴岡駅方面
に進みます。2キロちょっと進み、平京田交差点を、市役所・鶴岡公園
方面へ右折(この交差点手前には、小真木原公園への案内標識が上がっ
てます)。市役所の交差点を右折し(ここにも方面標識あり)、そのま
ま2キロ程度直進すると、右側に小真木原公園のゲートがあります。
 駐車場は、公園の東側(競技場・公園側)と西側(ドリームスタジア
ム・テニスコート側)などにあります。収容台数は結構ありますが、
試合開催時などは、できるだけ早めの来場をお勧めします。
<<< 利用料金 >>>
<グラウンド>
(アマチュアスポーツの使用のみ掲載)
区分 時間 使用料
入場料の
徴収なし
高校生等以下 1時間 1,100円
その他 2,200円
入場料
徴収
高校生等以下 2,200円
その他 4,400円
照明 30分 3,000円


<室内練習場>
区分 時間 使用料
専用使用 高校生等以下 全面 1時間 560円
半面 280円
その他 全面 1,680円
半面 840円
個人使用 中学生以下 1回
(2時間
以内)
60円
高校生等 110円
その他 210円
照明 全灯 1時間 500円
半灯 250円

※高校生等は、高校、高専、専門学校の学生・生徒。
●おまけ。コーチ二態。
 全日本−JR東日本東北の試合後、全日本の若手内野手を指導するコーチ
陣の中に、広岡達朗氏の姿が(中央下)。しかも、ロッテのジャージ(笑)。
教え方はというと、スローイング難の内野手をネットに向かわせ、反復練
習をさせるという、極めて単純でオーソドックスなものだった。指導を受
けている若手くんは、黙々とネットに向かってスナップスローを繰り返し
繰り返し行い、広岡氏の指導を真剣な眼差しで頭に叩き込んでいた。
 かたや、ミスターあみだくじ・石毛宏典氏(これまた中央下)。
彼もスローイング難の内野手を預かり、指導していたのだが、その指導法
はというと「いいかお前、打球に向かってダッシュする時はな、“おっ、
いい女がいる!”っていう気持ちで向かって行くんだぞ!」「ステップは
な、“俺は足が速いんだぞ!”って見せ付けるように俊敏にな!」などと
いったふうに、喩え話がやたら多い。確かに、見ていて面白いことは面白
い。その訳解らん話の内容もさる事ながら、話の中身を飲み込めずにきょ
とんとしている若手の表情も、見ていて思わず笑ってしまい、同時に「解
らんのは君だけじゃないぞ」と同情を寄せたくなってしまうのである。
 そんな彼に対し、指導者として、もっと話術を磨いて欲しいと願うのは
決して私だけではあるまい(苦笑)。
 で、何故「あみだくじ」?いえ、解る人は解るのよ(謎笑)。





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