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1968(昭和43)年
第8回日米野球大会
巨人−カージナルス(鳥屋野)
11.06
<雨天中止>
11.07

本場大リーガーの醍醐味に沸き上がる観衆
5ホーマーが乱れ飛ぶ長打戦に、大いに盛り上がる
 公式戦を観戦する機会から遠ざかっていた新潟県民。
しかし1968(昭和43)年、そんな新潟の野球ファンにとって最高のプレゼントがもたらされた。
8回目を数える日米野球の、新潟開催が決定したのである。
 第8回日米野球大会・巨人−セントルイス・カージナルス戦は11月6日(水)、新潟市営鳥屋
野野球場で開催されることになった。主催:読売新聞社・報知新聞社、後援:県・新潟市、
協賛:日立製作所・明治製菓・ペプシコーラ。翌日の前売発売開始を告げる、9月21日付の
読売新聞新潟版の社告は「米大リーグセントルイス・カージナルスの来日は県内でも大きな
期待を呼んでおります。近代野球の妙味あふれる熱戦をご期待ください」と、前景気を煽っ
ていた。


 現在、読売新聞社もしくは毎日新聞社が主催して開催している日米野球といえば「日本プ
ロ野球・オールスター−米メジャー・オールスター」という図式が一般的。だが、この頃は
というと、アメリカからは大リーグ球団が1球団だけやってきて、対する日本側は巨人、もし
くは当該開催球場に合わせた変成チーム、全日本オールスターなどが入れ替わり立ち代わり
に対戦するという形だった。日程も10日から2週間で6〜8試合、というものではなく、実に
1ヶ月近く掛けて日本列島を縦断するという、大変大掛かりものだった。


 新潟で初めての日米野球開催には勿論、地元の野球ファンは大きな期待を寄せていた。フ
ァンの中には「新潟では、これが最初で最後かもしれない」という声もあって、空前の前評
判を呼んでいた。中には、お隣の福島や山形などからも、わざわざ入場券を求めに来る人も
いたようだ。
 1日になると、球場前にウェルカムゲート(歓迎アーチ)も上がった。当日始球式を務める
亘(わたり)四郎・新潟県知事も、トレーニングに余念がない。亘知事はかつて、米ラット・
ガース大に留学した経験がある。その頃にはアメリカンフットボールや水泳などで鳴らした
スポーツマンでもある。就任後も知事公舎にはボールとミット、グラブが置いてあり、大会
などで始球式を務める時には必ず練習をするという念の入れ様。県秘書課では「スポーツマ
ン知事ですから、当日はきっとストライクでしょう。カージナルスの面々には、得意の英語
でジョークを連発するんじゃないですか」と、日米親善を兼ねて知事の奮闘(?)を大いに期
待していた。

 日米野球を迎える、新潟の野球ファンの声をいくつか。
新潟市・そば店店主・二瓶吉久さん(61)
 人は私のことを“野球狂”といいますが、好きなんだから
仕方ない。特に巨人は大好きですね。アメリカの野球はよく
知らないが、カージナルスというのは強いチームだと聞いて
いる。新潟の試合では、巨人が満塁で、王が一発ホームラン
でも打ってくれたら最高です。本当に今からワクワクしてい
ます。

同・県庁勤務・丸山笙子さん(22)
 10年前からジャイアンツファン。今度のカージナルス戦は
ずっと前から楽しみにしていました。家では父と「どちらが
勝つか」と楽しい口争いをしている。カージナルスが底力を
出せば、やっぱり大リーグのチャンピオンですから。でも、
巨人もがんばって欲しい。

同・新潟コンマーシャル監督・中村修治さん(45)
 本県は、プロ野球は巨人、六大学は早稲田のファンが圧倒
的。その巨人と、本場の最強チームの一つであるカージナル
スのゲームが見られるとはすばらしいことだ。仙台大会以来
調子を上げてきたギブソンの投球もぜひ見たいし、日本選手
権(シリーズ)4連覇の偉業を遂げた巨人の細かいプレーが、
どこまでカージナルスに通ずるか興味が尽きない。このよう
な大会が開かれることは地方球界のレベルアップにも大いに
役立つ。

中蒲小須戸町・国鉄勤務・上田弘さん(43)
 プロ野球は今まで10試合くらい見ているが、今度のカー
ジナルス−巨人戦は特に楽しみだ。ギブソンの力強い投球に
期待しているが、巨人も王、長島、土井などがある程度打ち
込んで欲しい。勝敗も一つの焦点だが、見ていて面白いゲー
ム展開を願っている。日米対抗戦らしい、華やかな打撃戦を
見たいものだ。
 大リーグの強豪、カージナルス。迎え撃つは、V4を達成したジャイアンツ。両雄がいよい
よ、新潟で相見える。
 カージナルスは試合前日の5日、午後5時25分新潟空港着のチャーター機で、巨人は午後8時
32分新潟駅着の急行「越後」で新潟に到着した。


11.06
<雨天中止>
 ところが、当日はあいにくの雨模様。試合は中止となり、翌7日に延期となった。

 この日ばかりは両チームとも、宿舎でのんびり過ごしていた。
 カージナルスの宿舎は新潟市万代の「ホテル新潟」。選手はほぼ全員がトランプ遊びをした
り、自室でゴロ寝を決め込むなどして、各々連戦の疲れを癒していた。一方、首脳陣は雨中の
市内観光を楽しんでいた。スタン・ミュージアル球団副会長、シェーンディーンスト監督はタ
クシーをチャーターして、雨中の新潟市内を見物した。
 さて、カージナルス各選手の新潟評だが「新潟は地方都市だと聞いていたけど、ネオンなど
は東京や大阪と変わらないね」と、想像していたよりも開けた街には、みんな驚いていた様子
だった。新潟入りした5日夜には、さっそく夜の街にも繰り出したものの「新潟の女の子には
会えなかったよ」と、少し残念そう。
 他方、巨人の宿舎は新潟駅前の「新潟東映ホテル」。こちらはほとんど全員が自室にこもり
っきり。幸運の雨とばかりに、ゆっくり身体を休めていた。


11.07
 翌7日、新潟は心配されていた雨もからりと晴れ上がり、絶好の野球日和となった。球場は
午前9時30分に開門、11時くらいから続々とファンがスタンドを埋め始め、正午頃にはほぼ満
員となった。

 球場近くにある県立女子高(現新潟江南高)に向かう定期バスの他に、更に臨時バスの増発が
あるとはいえ、交通のよくなかった、当時の鳥屋野球場。初の日米野球とあって、63年の開場
以来最大の、人と車との波に襲われた。球場周辺には約2千台がいっぺんに集まり、球場前の
狭い駐車場だけでは捌き切れず、付近の道路や公園にも誘導して駐車させるという苦肉の策。
しかし特別に増員された新潟東署員60人の手で、何とか事故なく済んだ。というのも、前日は
雨で試合が中止になったが、署員は球場周辺で車両誘導のリハーサルをしていたとかで、おか
げで“本番”はスムーズにいったという。
 また、球場周辺には前景気を当て込んで、ダフ屋約20人がうろうろ。署員はこの排除にも大
わらわ。しかし、主催者側の「絶対に買わないように」のPRもあいまって、締め出しに見事
成功した。


 グラウンドでは、午前11時から巨人がフリー打撃を開始。
王、黒江、高田らが姿を現した。次々と繰り出される打球に、観客は暫し見とれていた。しか
し、王の打球が今一つ伸びない。原因は右翼から左翼へ吹きぬける風。これに押し戻されて、
左打者の会心の当たりが右中間で詰まってしまうのだ。
 さて長島だが、この試合は病気のため欠場した。「出て欲しかったよなー」と残念がる声が
スタンドのあちこちから聞こえていた。
 一方、一塁側の巨人ベンチにはサインを求める若い女性が押し掛けた。「きょうは仕事を休
んで来たんだから」と、選手と見れば誰彼構わず、手当たり次第にノートを突き付けていたと
か。

 この日から新潟2社目の民間放送、新潟総合テレビ(NST)が試験放送を開始した。NSTでは全
社員を動員して、内外野入口に「善意の小箱」を設け、募金を呼びかけた。自社で作ったメン
バー表を配布して、カンパを頂くというもの。集まった浄財は、三島郡寺泊町に建設予定の心
身障害者養護施設の建設資金に活かされることになっていたが、その額、実に7万6千円。
「みんな本当に気前が良くて…」と、女性社員もびっくり。寄付金は試合前、亘知事に代わっ
て出席した君健男・副知事に託された。
 この時の寄付金が、現在の「コロニー白岩の里」の建設費の一部になっているのである。

 満員のスタンド、内野席は通路も人であふれかえった。
場内整理の係員が、汗びっしょりになって場内を駆け回る。スタンド上段の塀に上がって観戦
する若い男性を、係員が「危ないですから降りて下さい」と注意すると、男は「俺だって入場
料払ってんだ!降りれって言うなら、指定席に入れれ!」などと、理不尽な屁理屈を叩いて、
逆に食って掛かる始末。これに見かねた周囲の観客から「オイ、見るんだったらルールくらい
守れや!」「私は福島から来てるのに、不自由なのを我慢してるんだ!」と、省を促す声が飛
んできた。この手痛い御説教に、男は渋々塀から降りたそうな。めでたしめでたし(笑)。


 開会式、日米国歌の演奏に続いて、両軍監督・コーチに花束贈呈の後、君副知事の始球式が
あって、午後0時57分プレイボール。亘知事は前日が雨天中止になり、この日は公務があるた
め欠席。残念ながら晴れ舞台は果たせませんでした。


 先発は、巨人・堀内、カージナルス・カールトン。
試合結果から言うと、カージナルスのワンサイド。それも、実に8得点すべてが4ホーマーに
よるものだった。
 まず3回、フラッドが堀内の外角いっぱいのカーブをすくって左中間へ叩き込んだ。この1号
ソロでまず1点。4回にはシャノンがカーブを射抜いて左翼中段へ2号2ラン、5回には登板予定
のないギブソンがファンサービスで代打で出場して左前打、ブロックが投前ボテボテも、快足
を飛ばして内野安打、そしてフラッドがこの試合2本目、左翼上段へ3ランをぶち込んだ。仕上
げはブロックが、左翼へとどめの2ラン。
 4本いずれも文句なしのいい当たり。とはいえ堀内も、2番手・高橋明も、ピッチングに工夫
が足りなかったのも事実。配球やコースを組み立てればよかったのだが、パワーヒッターに真
っ向勝負を挑んで、まともに被弾してしまった。
 一方の巨人はというと、長身・カールトンのカーブに手を焼いて、思うような打撃ができな
い。4回には連続3四球で二死満塁としたが、このチャンスで槌田がフルカウントからボール球
に手を出して空振り三振。2番手のトーレスは平凡な内容だったが、それでもダメ。6回には二
死一、二塁のチャンスで、森永の左翼線に切れてゆくフライを、ブロックにダッシュよく好捕
された。
 結局巨人は、7回に槌田が左翼へソロを打って、完封を逃れるのがやっと。それでも9回表、
一死満塁のピンチで倉田が暴投を犯して、三塁からトーレスが本塁を突くも、倉田の迅速なベ
ースカバーでアウトに仕留めたのは見事だった。

 実は、3回のフラッドの本塁打には一度物言いが付いている。
打球を確認したのは二塁塁審の平光清。腕を頭上で回してホームランの断を下した。しかし、
これに黒江、相羽らが「フェンスの内側に当たって、跳ね返ってからスタンドに入った」と主
張。牧野茂コーチも飛び出して「審判同士で協議しろ!」と詰め寄った。困った平光が、審判
を呼び集めて協議しようとしたら、一塁塁審のバーリックが手を振り上げながら大声で「ヒラ
コウ、君がホームランと言ったのなら、それでいいんだ!!」と諭した。この大声には巨人側も
驚いたようで、程なく、すごすご退散。“審判の権威”、その日米間での差を見せ付けられた
場面であった。

 全ての得点がホームランという、大味な試合。
鳥屋野球場は普段は高校野球などで使われるので、オーバーフェンスはそうそう出るものでは
ない。しかし、この試合では実に何と5ホーマーの“大量生産”。ホームランが出るたびに、
スタンドは「おおーっ」「ワーッ」と大歓声が上がり、本場のパワーに酔っていた。

 試合後、シェーンディーンスト監督は「はじめの3、4試合は調子が出なかったが、やっと良
くなってきた。投手陣が安定してきたし、打者も日本の投手に慣れて、タイミングが合うよう
になった。9日の全日本戦にはギブソンを先発させる。試合前のホームラン競争にはセペダ、
ブロック、スピージオ、シャノンを出す」と語った。カージナルスはこの第10戦までで7勝3敗
となった。



 本場のベースボールに酔いしれた新潟の野球ファン。しかし、帰りも楽しい道程、とはいか
なかった。通行規制で球場周辺の道路は一方通行となり、それも一本道だから、車がたちまち
長蛇の列をなす大渋滞。周辺は約1時間ほど交通が完全に麻痺した状態となり、ドライバー達
はいらいらしていた。
 とはいえ、初めての日米野球は興行的にも大成功。これが翌年の公式戦(巨人−広島)開催へ
とつながってゆくのだ。



10回戦 (STL 7勝3敗)
新潟市営鳥屋野野球場 20,000人
12:57開始 1時間58分
STL 0 0 1 2 3 0 0 0 2 8
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
(勝) トーレス 1勝1敗
(敗) 堀内 2敗
(HR) フラッド1号(堀内)、2号(3、高橋明)
シャノン2号(2、堀内)、槌田1号(トーレス)、
ブロック3号(2、高橋明)

STL   巨 人
(7) ブロック 4 2 2 (6) 黒 江 3 0 0
(8) フラッド 3 2 4 6 千 田 1 0 0
1 トーレス 2 1 0 (4) 土 井 4 1 0
(2) マカーバー 0 0 0 (8) 高 田 2 0 0
R2 エドワーズ 4 1 0 (3) 2 0 0
(3) セペダ 4 0 0 (7) 相 羽 1 0 0
(9) ハーグ 4 0 0 H7 国 松 2 0 0
(5) シャノン 2 1 2 (9) 末 次 1 0 0
5 ギャグリアーノ 2 1 0 H9 森 永 2 0 0
(4) スピージオ 4 0 0 (2) 槌 田 4 1 1
(6) マックスビル 4 1 0 (5) 3 0 0
(1) カールトン 1 0 0 (1) 堀 内 1 0 0
H ギブソン 1 1 0 1 高橋明 1 0 0
8 デービス 2 0 0 1 倉 田 0 0 0


37 10 8 27 2 1
振6 球4 犠0 併2 残6 振6 球8 犠0 併1 残7

STL   巨 人
カールトン 4 0 4 5 0 堀 内 4 2 1 3 3
トーレス 5 2 2 3 1 高橋明 4 1/3 8 4 0 5
倉 田 2/3 0 1 1 0

(審判)-

(二塁打)マックスビル
(盗塁)STL1
(失策)千田、滝





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(1966)
05.03 S−C(鳥屋野)
<--> (1969)
05.15 G−C(鳥屋野)


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